工房系と量産系の違いとは

工房系のランドセルと量産工場のランドセルは品質が段違い

みなさん良く耳にする「職人の工房系ランドセル」や「大量生産の量産系ランドセル」。
一体何が違うのか。

色々違うのですが、すぐ見てわかる部分だけピックアップしました。
が、その前に、両者の違いについて、明確な根拠はありません。

だからこそkazumamaが独断と偏見で「工房系」と「量産系」を勝手にカテゴリ分けしました!
なので、まずは両者をさらっと説明します。

工房系ランドセルとは

ここ最近になって出来た言葉です。
自らを「工房」という土屋鞄や山本鞄などが代表格ですね。

他にも中村鞄や黒川鞄、オオバや五十嵐などなど多数の工房系ランドセルメーカーが存在します。
どういったメーカーを工房系と呼ぶのかというと、

自社工場を持っていて、大量生産するための簡易的な構造ではないランドセル

という前提があります。
ただし、

工房系は職人が一つひとつ丁寧に作っているから本数が少ない。

これを言ったら土屋鞄や山本鞄は工房系ではなくなります。
なので、本数は何の目安にもなりません。

工房系に言えることは、伝統的な方法で作っているということです。
例えば手縫い個所。

実はほとんど意味がありません。パフォーマンスです。
もちろん手縫いの方が丈夫ですが、そこまでしなくても6年間くらい余裕です。

糸だって防水だったりと、かなり進化しているのです。

工房系とは、ひと手間を惜しまず、昔ながらの歴史ある構造や手法でランドセルを作っているランドセル工場を言います。

量産系ランドセルとは

中国産は論外なので、ここで話すことは全て国産の話です。

量産系は、文字通り様々なブランドのランドセルを一つの工場で作っています。
あまり工場名は表に出てきませんが、ナイキだったら羅羅屋が作っていたり、イオンのランドセルは協和やナースが作っていたりですね。

つまり
自社工場を持っていないブランドのランドセルまで作っているのが量産系です。

そのため、品質規格や構造やデザイン企画もバラバラなのに、一つの工場が作る為、悪く言ったら手抜き個所が多いです。
そうしないと作りきれないですから。
それに、工場の利益も超少ないので、

どれだけランドセル1本を安く早く作るかが勝負になります。

手抜き個所はあっても、基本構造は工房系と同じです。
また、量産系は機能が優れています。

セイバン、ハシモト、榮伸、協和、ナース、羅羅屋など、巨大な自社工場を持つ企業が名を連ねます。

ただ、量産はスピード命なので、作業の簡素化に全力です。
入社したての新人など、誰でもすぐに作れるように構造を簡単にしたり、不良や材料費を減らすためにコストカットしまくったりしています。

ただ、勘違いしてはいけないのは、量産系以下の工房系も存在します。
というか、20年以上前の構造の伝統的なランドセルと、現在の人間工学を駆使したランドセルでは、もちろん現在の方が背負いやすさ等いろいろな面で優れています。

そういった面では量産系の方が工房系より背負いやすかったり、丈夫だったりしますので、量産系=安物などと思わないことが大事です。

適切なランドセルの見分け方

ちょっと思ったより前置きが長くなって申し訳ございません。

ここからは、工房系や量産系にとらわれず、品質や構造的に優れている部分を一部紹介していきます。

適当にやった誰でも作れそうな感じ

誰が見ても簡単そうです。というか簡単です。
見た目の美しさは全くありませんが、これなら熟練した職人技術など不要です。
ただし勘違いしてはいけないのが、これは別に強度など機能的な影響はありません。
機能的優位性のない職人芸は、量産工場では不要と言う事です。

手間をかけて美しく見せる職人技

昔ながらのキザミです。じつは工場によってキザミの数が決まっています。
山本鞄は9キザミですね。
この部分は最後のまとめミシンでキザミごと破壊することもあるので、
キザミをした後のミシンまで経験ある職人が行わないとぶち壊しになります。
ちなみに不器用な人は10年やっても汚いです。

ポケットの裏側が適当

機能的な欠陥ではないですが、安っぽさMAXです。
ポケットの部分は、実はランドセルの中で最も作るのが難しいのです。
ここの構造が安っぽいところは、技術力が足りないと考えてよいです。
企業ではなく、作っている人間の技術力が足りません。
簡単にしないと作れないから安っぽくても簡単にしていると言う事です。

構造的に優れ、見た目も美しい

中に段差がなく、ものによってはタフテルカラー(オレンジっぽい色)ではなく黒だったりします。
もっと手の込んだものは柄になっていたりします。
これが出来るのはポケット部を自社で作れる証拠です。
部品は内職や外注に出す場合が多いですが、一つの企業が色々な内装を作っていたら、そこは技術力があります。
それだけポケット部は手間がかかり、また難しい部分になります。

注意して見ると違いがわかる部分

金具の表ではなく裏面

表面は良く見ていても、裏面は適当に流す場合が多いのが大量生産でありラインです。
今は機械で打ち込むことが多いと思いますが、手打ちなら絶対にこんなことにはなりません。
機械でも調節をしっかり行っていればこんなことになりません。
新人にやらしたり、納期に間に合わないと、ちょっとした調整で解決できるのに気づかず、こんな状態になったりします。

金具にこだわりがない

金具は露骨に製造原価に影響します。
それこそ良い金具と粗悪な金具ではリベット一個ですら値段が2倍くらい変わったりします。
錠前と呼ばれるロック部分も様々な形状がありますが、薄っぺらい物は安物です。
色もアンティーク系の塗装は高く、クロームメッキは安いです。
上記は一例ですが、塗装が剝れないように一層クリアコーティングしたりすると一気に高くなります。
金具にこだわらないハイブランド(ヴィトンなど)なんて存在しないように、ランドセルでも金具は品質を証明する一種の指標になります。

工房系と量産系のkazumama流語り

  • 工房系とは

老舗が多く、職人が一本一本丁寧に作り上げた工芸品のような位置づけです。
土屋鞄や鞄工房山本、村瀬やオオバなどがあります。

工房系と呼ばれるランドセルは品質が高く、ランドセル一筋40年といった熟練の職人が作るので年間の生産本数が限られています。
そのため、工房系のランドセルを買うなら早くしないと品切れになるという流れになりました。

工房系最大の特徴は、熟練した職人が丁寧に作るからこそ実現する“超高品質ランドセル”です。
素材から手縫い縫製など細部までこだわり抜いた職人魂が生きたランドセルです。

ただし多くの工房系ランドセルには欠点があります。

  • 量産系とは

大手メーカーが作るランドセルを総合して量産系と呼びます。
イオンやヨーカドーはもちろんですが、百貨店商品も量産系に含まれます。

最近はネットでも情報があふれているので“どこで売っているか”よりも“どこが作っているか”で量産系かどうか判断されます。
セイバンやハシモト、榮伸や協和といった大手ランドセルメーカーが作った物は、たとえ本革の高品質ランドセルだろうと量産系に分類されます。

量産系は職人技の伝統を守るのではなく、商品そのものを進化させているため機能がとても優れています。
体感重量やA4フラットファイル対応などは量産メーカーが発端となり、多くのランドセルが似たような構造で対抗しています。

量産系はその名のとおり工房系とは桁違いの生産力を誇ります。
その為、ほとんどの量産系メーカーにも工房系とは違った欠点が存在します。

kazumama流 それぞれの欠点

ランドセルを“作る”ことに関してプロフェッショナルな工房系。
一方、ランドセルを“使わせる”ことに関してプロフェッショナルな量産系。
ランドセル業界では、作ることと使わせることは全く異なったベクトルで商品開発が行われます。

  • 工房系の欠点

工房系には、近年主流となった機能が備わっていない場合が多いです。
代表的なのは土屋鞄のA4フラットファイル非対応です。

今年ネットでも散々叩かれていますが、工房系は伝統を守るあまり機能進化が遅いです。
アップ式ベルトに関しても工房系で採用出来ている所はあまりありません。
その為、悪い意味で“工芸品”と呼ばれています。

つまり、売りとなる部分は職人の技術や伝統、老舗という歴史であって、商品の機能として突出した部分が無く、進化が遅いことが欠点となります。

ただしこれは老舗工房のプライドでもあり、本来工房というのは利益に走るのではなく職人が子供一人ひとりの為にまごころ込めて仕上げていくというのが尊敬でき、感動すべき部分なので、ここは貫いてほしいです。

  • 量産系の欠点

量産系は、年間に大量のランドセルを作らなければなりません。
熟練した職人のこだわりではなく、作業効率化された生産体制が重視されます。
品質向上のため手間を惜しまず作るのではなく、誰でも間違いなく作れるように、できる限り構造の簡素化を行います。

そうしないと人を雇った所で生産本数を伸ばすことができません。
削れる部分は限界まで削り、効率化を図り、原価率を下げ、生産本数を増大していくことが工場を維持することになります。
その為、工房系至高主義者からは金額に関係なく“安物”という意識を持たれます。

つまり、製品に対する強いこだわりが無く、あくまでも子供が使う物として品質に線引きをしていることが欠点になります。

ただしあくまでも目線は子供です。子供にとって不必要なものは徹底的に排除する合理的なものづくりなので、市場規模は量産系が大きいに決まっています。
許せないのは、工房系のようなプライドを持ったものづくり品と、量産系の商品の金額差が無くなってきている事です。

ニトリの家具が老舗家具ブランドと同じ価格だったらむかつきますよね。

ランドセル選びで大切な事

“子供にも良い物を”という大人が子供に物を贈る思いを形にした工房系。
大人もその品質や質感に魅了され、良い物なら安心して6年間背負っていられるという思いから工房系を選ぶ場合。

“子供の為に必要な物を”という大人が子供を心配する思いを形にした量産系。
使うのは子供なので、高機能で体への負担が少ないものを選び、少しでも通学を楽にさせてあげたいという思いから量産系を選ぶ場合。

どちらも大切なことになります。
しかし、両者には圧倒的な違いがあります。

品質や質感に魅了される工房系の場合、商品というより企業のファンになります。

機能などに魅力を感じる場合、企業ではなく商品のファンになります。

商品を選ぶ際もアプローチ違うのです。

  • 人が物を買う時にはほとんどが2つのプロセスです。

ランドセルの場合は“買い与える”といった方が正しいので、分かりにくいかもしれません。
一旦自分が買う物だと思ってください。
以下が物を買いたいと思うプロセスです。

今よりもっと幸せを感じたいから

今ある痛みや不幸を取り除きたいから

大体このどちらかになります。
ランドセルの場合はもっと幸せになってもらいたいというより「他よりも良い物を与えて子供を大切に思う」の方が近いかもしれません。
痛みや不安も「通学で苦労させたくないから少しでも楽させてあげられるように」の方が近いかもしれません。

工房系も量産系もランドセルとして6年間背負えます。
主役は子供です。

そこだけは絶対に間違えないようにして欲しいと思います。

今回はかなり長くなりました。
ここまで読んでくれてありがとうございます。

 

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